いつも本ページをご覧いただき、誠にありがとうございます。 長野市の司法書士・行政書士ハートサポート法務事務所所長、鈴木祐介でございます。
今回は、不動産を贈与・売却しようとする際(所有権移転登記)や住宅ローンを借りるため抵当権を設定する際に、よくある質問の内容を解説させていただきます。
権利証(登記識別情報)を失くしてしまった場合、登記の手続きはできるのか?というご質問です。
権利証(登記識別情報)を失くしてしまった場合、登記はできるのか?
まず、権利証(登記識別情報)については再発行をすることができません。そのため、「権利証(登記識別情報)を失くしてしまった場合、登記はできるのか?(できないのではないか?)」と思われる方も多くいらっしゃいます。
結論から申しますと、次の3つの方法により、登記を行うことができます。(ご安心ください。)
1.資格者代理人(司法書士)が作成した本人確認情報を権利証の代わりに提供
2.事前通知制度
3.公証人による認証
以下、それぞれの制度について簡単に解説させていただきます。
1.資格者代理人(司法書士)が作成した本人確認情報を権利証の代わりに提供
これはイメージとして、権利証(登記識別情報)に代わる書類を、司法書士が作成・提供することにより、権利証が無くても登記手続きが完了できる…という制度であり、融資等がある不動産の売買や抵当権の設定を行う場合等、広く利用されている制度です。
本来、権利証(登記識別情報)が提供されないということは、不動産の権利者の本人性の確認が取れないということになり、登記手続きを完了させることはできません。
しかし、資格者代理人(司法書士)が、権利証(登記識別情報)に代わる本人性の確認を行うことにより、特別に登記手続きを完了させることができる、という制度であり、司法書士としては非常に責任が重い手続きとなります。
作成のための具体的な方法ですが、司法書士が、不動産の権利者と面談を行い、本人確認情報を作成することとなっています。住所・氏名・年齢・生年月日・干支等の一般的な事項はもちろん、不動産を取得した経緯や、権利証(登記識別情報)を失くしたと思われる経緯等、多くの事項をヒアリングします。
さらには運転免許証等の本人確認ができる身分証の提示をしてもらい、必要に応じ、不動産の固定資産税納税通知書を確認したりし、確かに(依頼者が不動産の権利者本人であることに)間違いないという確証を得られた場合、本人確認情報を提供し、登記の手続きを進めることになります。(本人確認のヒアリングは、本人性を確認する必要があるため、現時点ではZOOM等のオンラインの面談は認められていません。オンラインを使用した場合、顔を加工したりして、他人になりすますことができてしまうためです。)
このように、非常に責任が重い手続きのため、多くの司法書士は、本人確認情報の作成報酬を、通常の報酬とは別にご請求することが一般的です。(当事務所では(税込み)33,000円~の報酬がかかります。)また、本人確認情報は、(権利証(登記識別情報)の提供が必要な)登記申請を行う度に作成する必要があるため、注意が必要です。
2.事前通知制度
この制度は、権利証(登記識別情報)や上記の本人確認情報を提供せずに申請を行い、下記のような所定の手続きが確かに取られれば、登記申請が完了する…という制度となっています。
具体的に不動産の売買を例に本制度の流れを説明させていただきますと、以下のとおりとなります。
- まず、権利証(登記識別情報)や本人確認情報をつけずに登記申請をします。
- すると法務局は、売主に「(不動産を売却するため)名義を買主に変更する…という登記が申請されましたが、本当にあなたが申請しましたか?」という確認の通知を送付します。
- 売主はその通知を受領し、ご署名・ご実印の押印をして期限内に法務局に返送します。
- 法務局が通知の返送を期限内に受けとれば、確かに本人性の確認が取れたので、手続きを完了させます。
この制度を利用すれば、上記本人確認情報のような費用が別途かかることはありませんが、売主が通知を期限内に返送できなかったり、誤って実印でない印鑑を押印してしまった場合、登記申請が却下されてしまいます。そのため、金融機関の融資があるような登記申請では、この制度は利用されないことが一般的です。(当事務所の事例では、贈与による不動産の名義変更(所有権移転登記)の場合や、金融機関から交付された書類(登記識別情報)を紛失してしまった際の抵当権抹消登記の場合等に、事前通知制度を利用し登記申請をしています。)
公証人による認証
これは、イメージとして公証人が本人確認をし、その認証をする手続きです。 費用は、資格者代理人の本人確認情報に比べ低い場合が多いですが、一般的にあまり利用されておりません。
権利証(登記識別情報)を失くしてしまっても、登記の手続きは行うことができますので、その点についてはご安心いただければと思います。
一方、費用又は手間がかかることも事実。権利証(登記識別情報)は適切に管理していただくよう、お願いいたします。